サッカーナースレポート
ーパラスポーツ国際大会の感染症対策ー

パラスポーツ国際大会の感染症対策実施レポート

この記事では、スポーツイベントにおける新型コロナウイルス感染症対策について紹介します。
東京2020オリンピック・パラリンピックをはじめ、多くの国際スポーツ大会が採用している「バブル方式」。
2021年5月に実施されたブラインドサッカーの国際大会を例に、感染症対策の実際についてレポートします。

バブル方式とは

バブル方式とは、「大会開催場所(会場・ホテルなど)を大きな泡で包むように囲い、選手や関係者を隔離し、外部の人達と接触を遮断する」方法です。
感染症を「持ち込ませない」・「閉じ込める」・「拡げない」ために、バブルの中では下記のような対策が講じられます。
(1)大会関係者(選手やスタッフ)は大会期間前・中・後に定期的な検査を受ける
(2)大会関係者は事前に提出した活動計画に沿って行動し、大会中は宿泊場所と競技会場の往復のみ許される(移動は専用車両)
(3)観客など非関係者を競技会場に入れないことにより、大会関係者を外界から隔離する

パラリンピックに先駆けて行われたブラインドサッカー国際大会

サッカーナースを運営するケアプロ株式会社(以下ケアプロ)はNPO法人日本ブラインドサッカー協会(以下JBFA)のアライアンスパートナーです。

ブラインドサッカーは、「五人制サッカー」という競技名でパラリンピック競技になっており、8月29日から9月4日にかけて開催されます。
パラリンピックに先駆けて、2021年5月・6月に「Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2021 in 品川」(以下Santen ブラサカグランプリ 2021)が開催されました。
東京2020パラリンピック出場予定の8か国のうち5か国が参加し、ブラインドサッカー日本代表は、準優勝という好成績をおさめており、メダル獲得が期待されます。

Santen ブラサカグランプリ 2021

Santen ブラサカグランプリ 2021におけるサッカーナースの取り組み

サッカーナースは、Santen ブラサカグランプリ 2021にて、感染症対策や救護運営のサポートをしました。

大会開催期間中は、ケアプロの看護師、保健師、臨床検査技師がバブル内に24時間常駐し、大会参加者に対する感染症対策や検査などを行うことで、大会参加者や社会にとって安全・安心の大会運営をサポートしました。

詳細はこちら
https://soccer-nurse.com/news/picked/info-jbfa210521/

サッカーナース レポート

ここでは、Santen ブラサカグランプリ 2021を安全・安心に開催するために、どのように準備し、運営したのか紹介します。
※2021年5月大会時の感染状況・社会情勢に合わせて行った対策です。現在の状況とは異なる点があります。

【大会前】

◎企画内容や課題のヒアリング
大会の2ヶ月以上前、3月上旬にJBFAからバブル方式の運営や感染症対策について相談をいただきました。
初回の打ち合わせでは、JBFAから大会開催意義について丁寧に説明していただきました。
また、大会開催に向けた準備を進めているが「本当にできるのだろうか」と、社会の状況に心が揺れ動かされながら悩んでいるということも正直にお話いただきました。

その中で、
・ひっそりと、「いつの間にか国際大会やってました」
・選手たちはがんばってきたのだから、やらせてくれ
・スポーツっていいもんだから、やらせてくれ 
といった姿勢ではなく、社会とコミュニケーションをとり、情報発信していきたいという強いお思いが印象的でした。

ここからJBFAとケアプロの定例オンラインミーティングを開始し、大会に向けた準備を開始しました。

◎ステークホルダーとのミーティング
大会開催に向けて、本当に多くの団体・関係者に協力していただき、時には合同でミーティングを行いました。
以下に一部の関係者を紹介します。
・開催会場の自治体
・国際競技連盟
・スポーツ庁
・政府(内閣官房・厚生労働省・外務省)
・保健所(会場管轄・宿泊ホテル管轄・PCR検査機関管轄)
・提携病院
・旅行代理店
・ホテル
・バス会社 など

詳細はJBFA公式note
https://note.com/jbfa_b_soccer/n/n302c8480e082

◎事前現地視察
バブル内で大会関係者が多くの時間を過ごすことになるホテルの視察は3回行われました。

一般客とは異なる大会関係者専用の導線、専有フロアや客室、大会期間中の新型コロナウイルス感染症検査会場などを見学しながら、手指消毒をするタイミングや消毒する場所など感染症対策を確認しました。

感染症対策の実行力を高めるため、参加チームのアテンドをする各チームリエゾン*にも参加していただき、現地での事前説明会を行いました。
*チームリエゾン:入国後から出国まで参加チームに帯同をして、主催者との連絡やスケジュール管理などを務めるスタッフ 

大会関係者専用エレベーター
大会関係者専用エレベーター

◎マニュアル監修、陽性者発生時フローやポップの作成
感染症対策を確実に実行するためには、実現可能な対策を立て、関係者が理解しておく必要があります。
そのために下記のマニュアルなどの監修や作成を関係各所と協力しながら行いました。
・通常の大会運営マニュアル(大会概要・試合スケジュール・設営など)
・レッドゾーン*運営マニュアル
・感染症対策マニュアル
・新型コロナウイルス感染症検査手順
・陽性者および傷病者発生時フロー
・感染症対策チェックリスト
・感染症対策を注意喚起するためのポップ

*試合会場では「レッドゾーン」「ブルーソーン」の2つのエリアにわけました。
レッドゾーン
・バブルに入っているチーム、審判、一部の大会運営スタッフが入るエリア
・主に試合の実施に関わる業務を担うエリア
ブルーゾーン
・バブルに入っていない大会運営スタッフ、協力企業、メディア、その他の関係者が入るエリア
・試合の演出や試合中継の撮影、実況・解説はブルーゾーンから実施した

エリアを分けることでバブルに入ることのできないスタッフや協力企業の方も大会運営に関わることができるようにしました。
エリアを分けることで試合会場でもバブル状態を保てました。

◎検査運営準備および検査デモンストレーション
検査キットや検査に必要な感染症対策物品の手配はもちろん、検査後に発生する感染性廃棄物を適切に処理するための手配を行いました。

侵襲の少ない検査ではありますが、検査時間の制限・検査手技や陽性だったらどうしようという不安から、検査を受ける方には、少なからずストレスがあります。
少しでも選手や関係者が安心してスムーズに検査を受けられるように、
・事前に視覚障がいのあるJBFAスタッフ3名に実際に検査を受けてもらい、検査手順の課題洗い出しと改善
・検査手順の動画と資料の事前共有
といった対策を行いました。

ホテルの事前視察の際、JBFAスタッフとチームリエゾンとともに、検査の一連の流れを確認しました。
その際、JBFAスタッフから
「視覚障がいのある選手たちは、検査を待つ間、壁によりかかったり手をついて身体を安定させるため、検査後には待機列の壁を消毒する必要がある」
といったフィードバックを受けました。
手すりやテーブルだけでなく、広範囲の定期的な消毒を計画し、JBFAスタッフやチームリエゾンの協力を得ながら、実行しました。

新型コロナウイルス感染症検査会場
大会期間中の新型コロナウイルス感染症検査会場

【大会期間中】

◎新型コロナウイルス感染症検査
5月27日のチェックインから6月6日のチェックアウトまで、レッドゾーンの大会関係者(選手・チームスタッフ・運営スタッフ)に対して、定期的な抗原検査を実施しました。
海外からの参加者に対しては、変異株流行国3日目PCR検査および帰国のためのPCR検査の検体採取をしました。

大会関係者は、検査結果が陰性であることが確認できないとホテルから出ることができないため、検査は早朝に行われ、検査結果判明後は速やかにJBFAスタッフとチームリエゾンに報告しました。

睡眠や朝食の時間がコンディショニングに与える影響は大きいため、可能な限り、スケジュール調整を行いました。
選手やチームスタッフがうまく調整して検査に協力してくれたため、スムーズに検査を運営することができました。

検査の様子
新型コロナウイルス感染症検査の様子

◎会場やホテルでの感染症対策サポート
会場の定期的な消毒や、マニュアルを遵守した感染症対策(マスクの着用・ゾーニング・手指消毒・ソーシャルディスタンスの確保など)ができているかチェックを行いました。

会場ゾーニング
会場ゾーニング

◎大会救護
新型コロナウイルス感染症の世界的流行の中で、スポーツを再開・継続していくには、感染症対策はもちろん、スポーツ外傷・障害による地域の医療資源消費を抑える必要があります。

傷病者発生時には、バブル内で対応できるように、準備を進め、チームメディカルスタッフとサッカーナースで協力し、ケアをしました。
大会2日前には、国際視覚障害者スポーツ連盟(IBSA)・審判員・各チームのメディカルスタッフ(医師・トレーナーなど)全員参加の脳振盪に関するオンライン講習会が開催されました。

コロナ禍での国際スポーツイベントの開催は多くの困難があり、ブラインドサッカーにおいても、1年以上国際試合の機会はなく、選手にとって久しぶりの国際試合でした。
また、気温は25度以上の蒸し暑い夏日が続きました。
このような状況で熱中症やけがの心配もあり、提携病院の準備や調整も行っていましたが、選手がきちんとコンディションを整えて試合に臨んでくれたことや事前の予防策(水分塩分補給の徹底、チーム毎のエアコン付プレハブの準備、チームが交わらないような練習・アップ会場の設計など)を行ったことで、幸い、病院受診・救急搬送を必要とする傷病者の発生なく、大会期間を終えました。

救護の実際(担架搬送・救護計画書)
救護の実際(担架搬送の様子と傷病者発生時フロー)

【大会後】

レッドゾーン・ブルーゾーンのスタッフともに、大会終了後2週間も引き続き、毎日体調チェックシートによる経過観察を行いました。
レッドゾーンの大会関係者のうち国内関係者は大会終了5日後と14日後に新型コロナウイルス感染症検査を受検、海外関係者は各国のルールに従って最低2回の検査を受検しました。

大会終了後2週間が経過し、全関係者492名(レッドゾーン:122名・ブルーゾーン:370名)の大会後の経過観察が終了しました。
結果:
・新型コロナウイルス感染症の発症者は0名
・大会前後2週間、大会期間中に主催者が実施した検査回数は1183回(陽性者0)
・海外からの参加者は帰国後、各国のルールに従って検査などを実施(発症者の報告はなし)

詳細はJBFAニュースリリース
https://www.b-soccer.jp/news/16881-20210701

最終試合を6月5日に行ってから2週間、大会に参加した全ての方から新型コロナウイルス感染症の発症の報告もなくSanten ブラサカグランプリ 2021は「無事に閉幕」できたと言えるようになりました。

さいごに

実際にスポーツ国際大会の感染症対策と救護運営に携わる中で、多くの困難や課題がありました。
しかし、関係者と丁寧にコミュニケーションをとることで、各方面から理解と協力が得られ、乗り越えることができました。
そして安全・安心な大会を実現できたと思っています。

JBFA「Santen IBSA ブラインドサッカー ワールドグランプリ 2021 in 品川」実施報告書はこちら
https://www.wgp-blindfootball.com/

Santen ブラサカグランプリ 2021

サッカーナースでは、スポーツに関わる人に寄り添い、全力でスポーツイベント運営のサポートをさせていただきます。
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